アーミッシュの乗り物 馬車

アーミッシュの馬車

アーミッシュバギー (馬車)

アーミッシュはいま現代も移動のための手段として馬車を使っています。アーミッシュの馬車は現地ではアーミッシュバギー(Amish Buggy)という呼び方をします。アメリカのほとんどの人が、アーミッシュといえば馬車というイメージがあると思います。また、アーミッシュ自身も馬車や馬に対しては特別な思い入れがあるようです。実際現地のアーミッシュが経営するお店のロゴなどは馬車をモチーフにしたものがとても多いです。

アーミッシュは16歳くらいになると自分の馬車を持つそうです。アーミッシュの馬車にもいろいろ形があり、基本的に屋根のない馬車は独身の人が乗り、写真のような屋根のあるタイプの馬車は既婚の人が乗るそうです。また、馬車の形や色は地域によって米国中西部では黒色など、または白色や黄色もあったり。ペンシルベニア州ランカスター地域はグレー(灰色)が基本です。昔はすべて木で作られていましたが、今はファイバーグラスなどで作られているものが一般的になっているそうです。ランカスターにはアーミッシュバギーを作っているたくさん工房があります。

以前に友人の叔母さん(アーミッシュ)にバギーに乗せてもらったことがあるので、その時の様子をご紹介します。パカパカとけっこう馬の蹄の音がします。一見けっこう揺れそうなイメージですが、しっかりと車輪にサスペンションや緩衝材が効いているらしいので思ったよりは揺れない感じです。晴れたのどかな田園風景をゆったり進むのは気持ちのいいものです。動画ではアーミッシュバギーを体験させてくれるために、わりとゆっくり走ってくれてますが、もっとスピードも出せるそうです。

アーミッシュの馬車 (再生すると音がでます。)

アーミッシュでよく勘違いされているのが、アーミッシュは自動車を全く使わないというわけではなく、正確には自動車の所持や運転を行わないということです。他の非アーミッシュが運転する車に乗ることは禁止されているわけでなく、アーミッシュの家族旅行などでバス・バンをチャーターして遠くは他州まで出かけることもあります。

一見矛盾しているようですが、アーミッシュとアメリカの自動車歴史の観点を踏まえると理にかなっています。20世紀にはいると、アメリカは自動車文化が爆発的に広がり、すぐに列車や路面電車を待つことなく個人でどこにでも出かけることになりました。車にキーをさせばどこにでも行け個人主義を強調する自動車の機動性は、コミュニティの繋がりの脅威になるのではと危惧されました。アーミッシュでは自動車の所有をしないことを決めました。また当時から今でもそうですが、高い自動車を所持すれば見せびらかしたくなるというのは誰もが思うことでしょう。自動車は乗り物としてだけ「機能」するものでなく、自動車の所有は個人の虚栄心を煽ることにもつながると危惧されました。

アーミッシュのコミュニティの地理的な拡大により、馬車で移動するには困難な場所への移動が必要な場合には、バンやバスをチャーターするなどして、アーミッシュは自動車の『所有』と『利用』に線引きをして伝統と文化的妥協をしています。実質的にこの方法は、コミュニティの繋がりやアーミッシュの価値観することなく、車を利用してコミュニティを促進し、ビジネスを強化することを現在可能にしている。

アーミッシュスクーター

アーミッシュのもう一つの乗り物はペダルのない自転車で、現地ではアーミッシュスクーターと呼んでいます。

こちらは子どもから大人まで乗っているようでした。キックボードのように地面を蹴って進みます。ペダルを漕ぐというのがアーミッシュの中のルールで禁じられているようでこういう形になったそうです。アーミッシュの生活のルールについてはまた触れたいと思います。

Photo by Credit Robert Elzey